ロシアW杯 日本代表チーム いよいよコロンビア戦

ロシアW杯の予選リーグ、いよいよ日本が今夜登場します。相手はFIFAランキング16位の強豪コロンビア(日本のFIFAランキングは61位)。前回のW杯では1-4で惨敗した対戦相手でもあります。



日本対コロンビア戦 勝敗予想

当然コロンビアのほうが有利で、日本チームがどこまで健闘するかが注目となっています。もし日本が勝つことがあれば、先日のドイツを下したメキシコのように今大会の番狂わせ、大金星となるでしょう。

前回のこちらの投稿で、サッカーはアメフト(NFL)と比較してデータ分析で遅れていることを説明しました。知り合いのサッカーファンからは記事がアメフトびいきでサッカーのことを知らないと批判を受けてしまいましたが、私自身、小学生~中学生時代はサッカー部に所属してそれなりに本気でサッカーに取り組んできました。

また、大学生になってからは4年に一度のワールドカップは欠かさずTVで観ました。

ちょうどビデオデッキというものが普及した時期でもあり、試合を録画予約してあとでゆっくり観戦することができるようになったからです。記憶が正しければ、1986年のメキシコ大会から、全試合をTVで観ることができるようになりました。

以下はワールドカップの変遷と日本代表チームの話です。

メキシコ大会では、絶頂期のマラドーナが大活躍し、決勝では西ドイツを下して優勝しました。マラドーナの例の「神の手」プレーが有名です。現在のビデオ判定システムでは決して生まれないゴールですね。

マラドーナの「神の手」ゴール

しかし、マラドーナの真骨頂は、同じイングランド戦での「5人抜きシュート」です。中央からパスを受けてひょいと身を引いてからゴールまでほとんどスピードを落とすことなく、最後はゴールキーパーの1:1で抜いてゴールする姿には、当時笑いしか出てきませんでした。

マラドーナの「5人抜き」シュート

86年のメキシコ大会では、強力FWウーゴサンチェス率いる開催国のメキシコのベスト8躍進が印象的でこのとき開催国アドバンテージというものを初めて知りました。

1990年のイタリア大会も、寝不足を押して全試合(1次リーグ36試合+決勝リーグ16試合合計52試合)をすべてTV観戦しました。この大会のテーマ曲(英語タイトル To Be Number One)のメロディは今でも耳に焼き付いているほどです。


Gianna Nannini & Edoardo Bennato Un'estate Italiana

90年のイタリア大会では、何といっても開幕戦のアルゼンチン対カメルーン戦が印象に残っています。前回優勝のアルゼンチンを、大会前には全くのダークホースだった初出場のアフリカの無名国のカメルーンが撃破してしまったのです。カメルーンの決勝点となったオマンビークのヘディングシュートは伝説となっています。当時の解説者だったか、「プンピード(アルゼンチンのゴールキーパー)は、シュートがまるで高い空から降ってくるような感覚だったろう」と述べていました。

カメルーンの決勝ヘディングゴール

社会人になって平日は寝不足でフラフラになりながらも全試合を完全視聴(?)して、当時勤務先の所長から「勤務を全うしつつワールドカップ全試合視聴という偉業を達成した」ということで皮肉を込めて表彰されてしまいました。

このとき一番大変だったのは、ワールドカップの速報結果が電車のホームのKIOSKにチラシ張りされてしまっていて、嫌でも帰宅のときに録画視聴の前に試合結果が眼に飛び込んできてしまうことでした。

決勝リーグでのカメルーン対イングランド戦も、不幸にもこのチラシを観てしまい、録画ビデオを観る前にイングランド勝利という結果を知ってしまいました。それでも仕方なく録画を観たのですが、前半から後半に入っても終始カメルーンが優勢で、なんと2-1でリードしてしまったではないですか!試合の流れも完全にカメルーン。一時はチラシを見間違えたかと思いましたが、確かPKかなんかでイングランドが追いつき、結局3-2でイングランドが勝利した試合でした。

このワールドカップでは、対ユーゴスラビア戦でドイツのクリンスマンが見せた(魅せた)飛び込みヘディングシュートはあまりに鮮烈で今でも忘れられません。

クリンスマンのヘディングシュート

決勝戦では西ドイツがアルゼンチンを破り、前回の雪辱を果たす形で幕を閉じました。

そのころ日本ではプロリーグはなかったのですが、日産の木村和司選手のプレーは才能溢れる見事なもので、確かドイツチームが来日して親善試合をやったときは、ベッケンバウアー監督から、「木村選手は世界に通用する」とまで言われていました(多少外交辞令だったかもしれませんが)。課題は、木村選手のような突出したサッカープレーヤーがほとんどいない選手層の浅さでした。

そして日本では93年にJリーグが発足しました。私は当時海外に赴任していたのですが、Jリーグの試合をTVで観たのが(確か)サンパウロのホテルだったと思います。実況は日本語ではなく、ポルトガル語だったので何を言っているのか全くわかりませんでしたが、その試合のレベルの低さに強烈なショックを受けました。

日本の代表選手が集まったサッカーの試合がこの程度のレベルか。。。

それはもう、プロサッカーの試合というより、素人集団がボールに我先にと群がっているだけの素人サッカーにしか見えませんでした。試合の組み立てとかそんなレベルではなく、トラップもろくにできずにディフェンダーとボールを奪い合っている様にしか見えませんでした。

93年Jリーグ開幕戦

私が見た試合は上の開幕戦ではなかったと思うのですが、開幕戦も3ゴールはすべて外国人助っ人のゴールです(2点目のアシストは木村和司)。

こんなレベルでプロリーグ発足?しかも10チームも?

疑問しか沸きませんでした。

そして、サッカー観戦の熱も醒め、赴任していたアメリカで知ったアメリカンフットボール(NFL)の魅力に取り憑かれたのでした。

以後、ワールドカップの試合も含めてサッカーに興味を失いました。

1994年のアメリカ大会はほとんど観戦せず、89年のドーハの悲劇もTVニュースで知る程度でした。

そして。。。1998年のフランス大会での日本初出場。日本中がワールドカップ出場で沸いていました。

そんななか、私は日本が世界で通用するほど世界は甘くないと確信していたので、予選3敗は間違いないと思っていました。ところが、世の中はサッカーでついに世界の一流国に仲間入りしたとはやし立て、予選リーグ突破に向けてなんやらかんやらと大騒ぎです。

私は会社の同僚とワールドカップサッカーの話題になると、私は予選3敗するだろうと言うと、非国民扱いされてしまいました。アルゼンチンには勝てないかもしれないが、クロアチアとジャマイカには勝って2勝1敗で予選リーグ突破などと力説され、まったく話が通じません。

そして、初戦のアルゼンチン戦で0-1と惨敗した翌日のスポーツ紙を読んで愕然としました。

それはスポーツ紙でも最大発行部数を誇る日刊スポーツ新聞でした。

紙面では、「日本1点差涙」「夢舞台初戦 候補アルゼンチンといい勝負」「抑えた 最強の2トップ バティの一発だけ」と、いかにも接戦で惜しくも勝ちを逃したかのような事実歪曲、大本営的な発表でした。記事の中身も、如何に惜敗したか、日本代表の決勝リーグ進出が見えたかのような内容だったと記憶しています。

日刊スポーツの大本営発表

当時の日本の雰囲気から日本が全然ダメだったとは書きにくかったのでしょうが、メディアがそれでは言語道断です。戦時中の大本営発表と何ら変わらない最低レベルのメディア報道です。この件で日本のメディアに対しての不信感も決定的となりました。

アルゼンチン戦は、スコアこそ0-1と接戦のようでしたが、相手のシュートがクロスバーに当たった幸運などもあり、内容的には日本は何もできずに終始アルゼンチンのペースで終わった試合でした。

当時、サッカーのデータ分析が現在のレベルのものがあれば、日本が如何に一方的に攻められていて、シュートチャンスや決定機がほぼゼロだったのが良くわかると思います。

98年フランスW杯 アルゼンチンvs日本

次のクロアチア戦も連敗して、0勝2敗となり、一次リーグ突破が絶望的となりました。最終戦の相手は日本と同じW杯初出場のジャマイカです。

私はたくさんの友人とジャマイカ戦の賭けをしました。ほとんどの友人がいくら何でも南国のサッカー無名国のジャマイカには負けるわけないだろうと、私が日本の負けに対してオッズを高くして日本の勝ちに賭けました(私は2点以上取られて負けるに賭けました)。

私は日本が負ける予想をした背景は、ジャマイカの選手は多くが欧州のリーグに所属する選手だという情報のみでしたが、それだけで十分でした。世界のレベルをまるで知らない日本チームが、世界のレベルで戦っている経験を持つジャマイカに勝てるはずがないと考えたからです。

結果は、1-2で日本の負け。日本は3連敗でワールドカップを去ることになりました。W杯開催前は称賛の的だった岡田監督や戦犯と決めつけられた城選手は、心無い日本の国民から「帰ってくんな」「無能者」など散々な避難を浴びて本当に気の毒でした。

それでも、日本のメディアは自分たちの報道が間違っていたとは認めずに、「次のワールドカップに向けて感触をつかんだ」だの「記録に残るW杯初ゴール」だの報道していました。ゴン中山がジャマイカ戦で決めたシュートなんて、試合がほぼ決まったあとの、どうでも良いゴールでした。ゴールキーパーも2対1になって最後は諦めていたし、シュート自体は誰でも入れられる簡単なものでした。

日本対ジャマイカ ゴン中山のゴール

ちなみにゴン中山選手は98年ワールドカップの年にJリーグで4試合連続ハットトリックのギネス記録を樹立しています。これは中山選手が極めて優秀なストライカーだったというより、当時のJリーグのレベルの低さを象徴しています。守備の堅牢さが確立されている世界のトップリーグで1選手が4試合連続のハットトリックなど有り得ないからです。

中山雅史 驚異の4試合連続ハットトリック

その後の2002年、2006年、2010年、2014年と日本代表は連続でワールドカップに出場していますが、別に日本のレベルが世界レベルになったからではなく、出場国の枠が1998年から24チームから32チームに増えたからです(アジア代表枠は2ヵ国から4国へ増加)。弱小アジア枠が4枠もあるので、予選突破がラクになったのです。

それに比べて欧州や南米は強豪国がひしめき合うなかで予選リーグを突破することは至難の業です。事実今回のロシアW杯でも、超強豪のイタリアが予選で敗退して出場を逃しています。

日本のサッカーのレベルに関しては、私は非常に厳しい考えをしています。

1998年の初出場以来、過去5大会に出場した日本チームですが、決勝リーグに進んだ2002年と2010年も含めて未だに世界レベルには達していないと思います。

その一番の要因は、ズバリ、シュート(ゴール)の世界レベルにあると思います。

個人技で勝てなければ運動量とチームワークで相手に勝つとか、パスや守備力で世界に挑むとか、日本の戦術はいろいろ語られていますが、サッカーで勝つためには得点しなければなりません、当たり前ですが。

得点するためには、シュートを決める必要があります。

しかし、世界レベルのチームとなると、そう簡単にはシュートを打たせてもらえません。教科書的な態勢から、トラップをして、踏み込んで、前を向いてゴールを狙うなんてことは100%不可能なのです。

ワールドカップのシュート(とゴール)を統計立てて分析すればわかると思うのですが、多くのゴールが、「ディフェンダーに競り勝って」「有り得ない姿勢から」「キーパーが届かない場所への」ゴールです。

フリーになって余裕を持って決めたシュートなどほとんどないと思います。

日本代表のゴールで、この「ディフェンダーに競り勝って」「有り得ない姿勢から」「キーパーが届かない場所への」ゴールを決めたのは、過去5大会で、たった一度しかありません。

それは、前回(2014年)大会の1次リーグ第3戦の対コロンビアで岡崎が決めた同点ゴールです。

2014年W杯岡崎の対コロンビア戦ゴール

このゴールは、コロンビア戦前半終了間際に決まった値千金のゴールでした。このゴールで前半は1-1で折り返し、後半に繋げることができました。結果的には1-4で実力差を見せつけられてしまいましたが、コロンビアも勝ちに行った試合のなかでのゴールだったので、価値の高いものでした。

残念なのは、この岡崎のシュートシーンは、ヘディングシュートなので映像的に見栄えがしないのか、ワールドカップのTV番組や報道でもほとんど再放送されないことです。中田や稲本、鈴木のゴールシーンばかり再現されますが、あれはすべて世界的なレベルから見たら「ごく普通の」ゴールです。岡崎のゴールはほとんど「忘れ去られた」ゴールになっているのが本当に残念です。

(2018年6月20日追記)

このブログを書いた直後、ワールドカップロシア大会で日本は初戦のコロンビアに1-2勝利という大金星を挙げました(相手が試合開始早々のレッドカードで10人だったという圧倒的な有利な状況ではありましたが)。

前半4分で相手が退場で10人になってPKで1-0という事実を差し引いても、この試合の勝利は日本チームが世界レベルにまた一歩近づいた証拠だと思います。

特に、大迫のヘディングシュートは、上で書いたような、「ディフェンダーに競り勝って」「有り得ない姿勢から」「キーパーが届かない場所への」世界レベルのゴールでした(まあ「有り得ない姿勢」ではなかったかもしれませんが)。

大迫の世界レベルのシュート

しかし大迫は前半ドフリーになって大きく外したシュートは、あまりに稚拙で日本のレベルの低さを象徴するシュートだと思います。まあ後半あまり萎縮することなくプレーに専念したのがその後のスーパーゴールを生んだのでしょう。

大迫の日本のレベルの低さを象徴したシュート

大迫選手には次のセネガル戦でも伸び伸びとプレーしてゴールを決めてほしいと思います。

そして、日本のメディアには、これまでのような単細胞的なお祭り騒ぎと行き過ぎた批判を反省し、日本のサッカーの世界レベルを正しく認識した節度のある報道をしてほしいと心から願っています。

(2018年6月25日追記)

なんと、日本代表は予選第2戦で、強敵セネガルに2-2で引き分けという二つ目の大金星を挙げてしまいました!これで決勝リーグ進出はかなり濃厚になってきました。

この試合は、私がこれまで観た日本代表の過去20年の試合のなかでも、文句なしの一番の出来だったと思います。身長と運動能力で勝るセネガルの選手相手に良くぞ身体を張って頑張ったと思います。2つのゴールも見事です。

しかし。。。大迫選手が再び恥ずかしいシュート外しQBK(急にボールが来たので)をやってしまいました。大迫は第1戦でドフリーになって大きく外したシュートに次いで、第1戦も日本のレベルの低さを象徴したシュートになってしまいました。。。


再び大迫の日本のレベルの低さを象徴したシュート

こんなレベルの低いプレーは他の国の代表では決して見ることができません。

まあこのレベルのQBKは日本のお家芸でもあります。2006年の柳沢、2014年の大久保,
等々。。。


柳沢のQBK


大久保のQBK

残るは運命のポーランド戦です。。。

(2018年7月1日追記)

ポーランド戦は0-1で敗退したものの、セネガルとの同率でファウル数で下回る日本が決勝リーグ進出を決めました!

メディアでは、最後の時間稼ぎ作戦を非難する報道が溢れていますが、私としては全く理解できません。W杯のような世界最高レベルの世界では決勝リーグに行くために手段を選んでいる余裕はありません。西野監督の時間稼ぎ戦略は極めて正しい戦略であり、結果を出しているのになぜ非難されるのでしょうか??

さらに、3戦目の大一番にスタメンを6人も変えたということで、こちらも疑問視される報道が目立っていますが、これも全く理解不能。スタメンを変えることは決勝リーグを見据えての休息を取らせるという意味でも当たり前の選択だし、そもそも同じスタメンで戦うのは連戦では無理な話。例えば選手層の厚いベルギーは3戦目に9人(!)ものメンバー交代をしています。同じスタメンで全試合戦えるほどW杯は甘くありません。

こんなところにも、日本のメディア(そして主流の意見に無責任に迎合するだけの無教養な国民)のサッカーに対する無知が露呈しています。日本がサッカー先進国になるためには、選手のレベルアップだけでなく、国民の教養のレベルアップも同時に必要だと改めて痛感しました。

(おわり)

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