2015-12-29

第6回日本バッハコンクールに出場、「6声のリチェルカーレ」で奨励賞をいただきました

9月に突然思い付いたバッハコンクール。30年振りにピアノを再開し3ヶ月の練習を経て迎えた本番、緊張のあまりステージでは脚がガクガク状態、演奏はミスの連発のうちに5分の演奏時間はあっという間に終了してしまいました。

コンクール会場の汐留ベヒシュタインサロン

序奏から常識では有り得ない何でもない箇所で盛大に音を外してしまい、その後も凡ミスのオンパレード、中盤でやや正気を取り戻したものの、後半で再びパニック状態に陥り、絶対にやってはいけない演奏の中断に。。。

応援に来てくれた家族や友人、そして真剣に聴いてくれている審査員や出場者の人たちに、心の底から申し訳ない気持ち一杯で演奏を終えました。

どうしてそんなことになってしまったのか?

私が出場したのは汐留地区の一般Aというグループで、社会人で正規のピアノ音楽教育を受けていない条件のグループでした。応募者は10名、そのうち当日欠席者が2名だったので8名が順番に演奏をする予定でした(男性2名、女性6名)。

そのグループで私の順番は4番でした。3番が欠席だったので、1番と2番の方が私の先に弾きました。

最初の演奏者がステージに上がり、演奏を始めます。曲はフランス組曲第5番より。

。。。素晴らしい。。。!

本当に心から感動するような演奏でした。

同じコンクールを目指して頑張ってきた同志という共感も強く、演奏の途中で神が空から舞い降りて来てピアノの前で祝福をしているような錯覚さえ覚えました。

しかも、ほとんどミスタッチがなく、自信たっぷりに朗々と弾いています。

。。。すごい。。これがピアノコンクールのレベルなんだ。。。

初めて体験するコンクールのレベルのあまりの高さにただただ圧倒されました。

そして、2番目の演奏者がステージに立ちます。

椅子を調整したり、ハンカチで鍵盤をさっと拭いたりします。少し緊張気味でしょうか。

そして。。。

落ち着いて平均律第2巻の曲を弾き始めました。

美しい。。。なんて素晴らしい演奏だろう。。。

思わず聴きながら感動してしまいました。平均律はあまり聴かないので馴染みのない曲でしたが、演奏には間違いない魂がこもっていました。

しかもこちらもミスタッチはほとんど気がつかないレベルです。

観客席からも、レベルの高い演奏に祝福を与える雰囲気が感じ取れました。

そして同時に、果たして自分の演奏は、観客の人々にこのような感動を運ぶことができるのだろうか。。??という大きな大きな疑問が沸いてきてしまったのです。

その疑問はやがて不安と焦燥に変わり、自分の心はそれに圧倒されてしまいました。

自分の演奏は、果たして感動を与えられるようなレベルでないのでは?

そもそもドシロウトの自分がこの後に演奏するなど、完全に場違いなのでは?

コンクール会場に入る直前までは、ほとんど緊張もせずにむしろリラックスしていたのですが、
いざ自分の演奏本番になって、完全に精神錯乱状態に陥ってしまいました。

こうなってしまうと、もはや技巧がどうのこうのとか如何に上手く弾くかと言っているレベルではなくなります。 (´д`)

ステージに立った段階で既に頭のなかは真っ白に。これから始まる戦慄の瞬間を迎え、恐怖で脚がすくんでしまいました。

演奏中の模様(次女撮影)

椅子の高さの調整も忘れ、楽譜を開いて、深呼吸。先生のアドバイス通り、なんとか雰囲気を作ってから「6声のリチェルカーレ」の冒頭の大王の主題を弾き始めます。。。

焦ってはいけない、焦ってはいけない。。。

ゆっくりといつもより意識してスローに弾き出します。しかし拍子がバラバラになってしまい、観客席から「なんじゃこの演奏は。。。?」という雰囲気がビシビシと伝わってきました。

そして、主旋律が始まったところで、技巧的には何の問題もない箇所で、まさかのミスタッチ。。。!

今まで何百回弾いたかわからない中で、これまで一度たりともミスしたことのない箇所を大外し。

再び観客席は

「この人は一体なんで今日この場でバッハコンクールなんかに出場してるんだ???」

という空気が。。。

いや実際はそんな空気は流れていなかったのかもしれません。

しかし、頭のなかには、「みなさん、ヘボな演奏を無理矢理聴かせる羽目になってしまい本当に申し訳ない。。。」との気持ちで一杯に。 (´д`)

その後の進行はほとんど記憶にありません。。。

幸いなことに、やがて冷静さを取り戻して、2ページ目以降は練習どおりに弾けるように回復しました。途中までは普段の出来を100としたら、おそらく80くらいでは弾けていたと思います。

しかし。。。

どのパートだったか、良く覚えていませんが、心のなかに再び、「ここでまた大きなミスタッチをしたらもはや致命傷になるな。。。」との邪念が生まれてしまいました。

その邪念通り、またまた普段ミスすることのない箇所で、今度は指が完全に停止してしまい、楽譜でもどこを弾いていたか全くわからなくなるという最悪の事態に。。。

演奏が途中で止まる。。。!

これは、コンクールの本番では、最もやってはいけない致命傷だということは知っていたのですが、まさにそれをやらかしてしまったのです。

どのようにリカバリーしたか全く記憶にありません。

ここはこう盛り上げて、この音符はフォルテでしっかりと印象付けて。。。などと事前にいろいろ練習した箇所はすべて無駄に。

おまけに緊張でペダルを踏む脚までブルブルと震えが止まらなくなってしまいました。

ペダル操作が制御できなくなり、バタバタと無駄なペダリングが多発、それに伴い旋律はいよいよ濁りが酷くなってしまいます。

頭のなかは相変わらず真っ白な状態。。。とにかく、再び曲を進めて、やがて3ページ目が終わり4ページ目に入るところで、終了の合図のベルが鳴りました。

演奏を中断します。

挨拶をして自席に戻ります。

すべてが音を立てて崩れ落ちた瞬間でした。

前代未聞のこんなヒドイ演奏にみんなを巻き込んでしまい、申し訳ない気持ちで一杯です。

事前に本番でアガッて失敗することは、ある程度は想定していました。

練習のようにミスタッチをほとんどゼロで弾くことなどないだろうということも。

しかし、ここまでヒドイ演奏に終わってしまうとは、我ながら想像を遥かに超えていました。

あまりの不甲斐なさと、皆に不快な演奏を聴かせてしまった申し訳なさに、穴があったら飛び込みたい気持ちでした。

しかしコンクールは続きます。

次の演奏者が弾き始めました。

私のボロボロ演奏に引きずられて悪影響がなければよいが。。。

しかし、そんな心配はまったく要りませんでした。

私の次の5番目の演奏者も、これまた素晴らしい演奏でした。平均律第2巻の私は知らない曲でしたが、バッハらしい旋律が美しく、もうそれは見事な演奏でした。

その後の演奏者の方々も、テクニックの優劣はあるものの、みなさん持ち味を頑張って最大限発揮した立派な演奏ばかりでした。

特に、7番目に弾いた方の平均律第2巻の9番は、それこそ鳥肌が立つほど美しくそして力強い最高の演奏でした。

それを聴きながら、バッハコンクールに出場するということの意味の重さを、今更ながらに痛感していました。

そしてすべての出演者の演奏が終了。

審査員の先生の講評は30分後くらいということで、妻と次女と一緒に会場の外に出て一息お茶をすることに。

妻は苦笑、次女からも「パパピアノ何度か間違えたよ」と指摘される始末 (´д`)

私は精神的にすっかり参ってしまい、

「もう地区予選突破して全国大会に進む可能性はなくなったよ、折角応援に来てくれたのに本当にゴメン」

と敗北宣言。

実は、今回密かに「優秀賞」を取って、地区予選突破して全国大会進出を狙っていました。

コンクールで「優秀賞」を取れば地区予選突破できるのです。

自信は全然なかったのですが、どうせコンクールに出るんだったら目標は大きく、そのくらいの覚悟で練習に打ち込もうと考えていたからです。

そして私は次女にあらかじめ、

「地区予選突破したら手作りのメダルが欲しい」

とリクエストしていたのです。次女はメダルではなく、私に知られないようにお祝いカードを準備してくれていました。

話をコンクールの当日に戻しますが、再び会場に戻り、3人の審査員の先生に全体講評をいただきました。それぞれの審査員の方のポイントは、

1. トリルの音は装飾音なので、洋服のフリルと同じようにもっと軽く小さいタッチで演奏してください。全部を同じように弾いてしまう傾向がありました。

2. 低音、中音、高音の構成を弦楽四重奏のイメージを作って演奏することが大切です。すべての音を均一に出すのではなく、同時に鳴る音の主従関係を作り、3次元的な音の構成を意識してください。

3. 直線的な音楽が続いてしまうと音楽自体が硬くなるので、フレーズ間の呼吸や間を大事にしてください。歌や管楽器は呼吸がないとできないので、ピアノも同じです。また声部ごとに特徴をつけて弾いてください。

ということでした。

全くご指摘の通り。。。私の弾いた「6声のリチェルカーレ」はトリル部はほとんどないので1番はあまり関係なかったのですが、3番のポイントなどはピアノレッスンで先生からのアドバイスと全く同じです。また2番のポイントは、対位法であるポリフォニー音楽の最も重要な点で、私も全然できていない点でもあります。

冷静になって思い返すと、私以外の出演者の方々の技巧は私とは次元が違うほど卓越したものだったと思います。一方、3番のポイントの直線的な音楽という点では、確かに、もっと呼吸をしてワンテンポ置いてフレーズを唄わせたらもっと素晴らしいのに、という演奏もありました。

私はボロボロの演奏でしたが、先生のアドバイス通り、フレーズ間の呼吸や間を置くことにはずいぶん意識して弾いたつもりでした。

審査員の先生方の全体講評が終わり、コンクールは終了となりました。

今回、友人のひらちゃんと奥さんも応援に来てくれていました。お二人ともピアノを趣味にしているそうで、来年の出場を考えているとのこと。しかし、折角観に来てくれたひらちゃんにもヒドイ演奏で申し訳ない。。。

ちなみに一般B(暗譜で制限時間7分のグループ)も聴いたひらちゃんの話によると、一般Bはとてつもないスゴイレベルだったそうです。

そしてホールの外の受付に、早速審査結果が貼り出されていました。。。

審査結果が発表

奨励賞に、私の名前が。。。ありました。

「奨励賞」とは、予選通過の優秀賞に僅かに届かなかった点数の方に出される賞のことです。

奨励賞のことは知っていましたが、自分がもらえるとは全く想像していませんでした。

意表を突かれて私もどう反応してよいのやら。。。

その場で、ひらちゃんから「おめでとうございます」、妻もビックリして笑っています。

「良かったね!」

「良かった。。。」

ちなみに優秀賞は5名の方が獲得、私の前に弾いた1番、2番と、直後の5番の方も優秀賞でした。


こうして私のバッハコンクールへの挑戦は終わりました。

返却された3人の審査員の先生の採点票を確認すると、得点は、8.0、8.0、8.1という結果でした。

講評を読むと、

「6声へのチャレンジ素晴らしいです」

「難曲ですが、良く弾かれています」

と、バッハの難曲と言われる「6声のリチェルカーレ」を選曲したこと自体を評価して下さったようです。

一方、

「メロディのつなぎをペダルで補佐するのは正しいのですが、決して濁らずあくまで補助的に使ってください」

「ペダルの踏み変え、ガクンと音がしないように気をつけてください」

「ペダルも深く踏む時と浅く踏むときがあるといいですよ」

と、揃ってペダルの課題を指摘していました。

普段自宅で練習するときは、電子ピアノでヘッドフォンでやっていたので、ペダルの雑音には気が付きませんでした。レッスンの先生には事前に指摘をいただいていたのですが、改善することができませんでした。。。

また、あれだけミスタッチをやらかしたことには一切触れていません。。。

おそらく、審査員の先生は、私の演奏を少し聴いただけで、普段どの程度弾けるのか、また弾けないのか、本番の良し悪しとは別にすべてを把握されていたのではないかと思います。

もちろん、ミスタッチは減点の対象ですし、自信喪失で弾いた事実も大きな減点になったと思います。

ちなみに、以下はコンクール当日の朝に弾いたものを録音したものです(最初の6分くらい)。本番ではこの半分くらいでも弾ければよかった。。。

コンクール当日の朝の演奏

妻にはコンクールの演奏をビデオ撮影してもらいましたが、今は思い出したくないので、少なくともしばらくは観ることはないでしょう。。。

私は今でも良くピアノ発表会の夢を見るのですが、それは、発表会当日に、今まで弾いたこともない曲を初見でたくさんの観客の前で弾く羽目になるという怖ろしい夢です。

今回のコンクールはその夢と同じような恐怖を感じました。

(余談ですが、もうひとつの怖ろしい夢は、卒業がかかった大学の期末試験の会場がわからず、人に訊ねようにも科目名も教授の顔も名前も思い出せないというものです)

これを克服しないことには、人様に聴かせる演奏どころか、長年のピアノに対する苦手コンプレックスは乗り越えられそうもありません。。。

3ヶ月の練習の成果を本番で出し切れなかったのは残念でしたが、真剣勝負のコンクールの世界を垣間見ることができたことは満足しています。

また、出場された方々は例外なく本当に見事な演奏で、残念ながら今回受賞を逃した方々の演奏も、私にとっては大きな勇気を与えてくれたものでした。

そして今回見事に優秀賞を獲得されて地区予選突破された方々、おめでとうございます。来年の全国大会でのご活躍を心からお祈りしています。

今回「奨励賞」で、もう少し頑張っていたらもしかしたら「優秀賞」で全国大会だったのでは。。。という悔いは全くありません。というのも、優秀賞を取って見事に全国大会に進出された方々の演奏のレベルが私とは次元の違うところにあることがハッキリと自覚できたからです。

ピアノの世界は深いですね。。。今まではほとんど自分で適当に弾いていただけでしたが、今回のコンクールで学んだことは、「演奏とは、自分を表現して聴き手に伝えること」という当たり前のことが(今更ながら)ようやくわかったことでした。

技巧も表現力のうちなので重要ですが、それよりもずっと重要なことは、やはり、「人に何かを伝える力」ですね。

いつかそれができるようになり自信がついたら、再びバッハコンクールにチャレンジしてみたいと思います。

奨励賞

最後に、応援してくれた家族と友人、そしてピアノレッスンを引き受けてくださった三浦先生、素晴らしいコンクールを主催・運営してくださった関係者の方々には心から感謝いたします。

(おわり)

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6 件のコメント:

  1. 奨励賞おめでとうございます。
    自分は小さい頃に少し習い、学生時代に我流で遊びで弾いてました。
    今年、電子ピアノを買い、同じように30年ぶりに再開しました。
    折角と思い録音してみると無茶苦茶緊張して間違えまくるし、聞き返すとがっかりの連続でして…
    ピアノには底知れぬ奥深さがあるのですね。審査員のアドバイスの言葉にびっくりしました。自分も何とか継続して、ちょっとでも世界をのぞいてみたいと思います。
    次回のコンクールでのご活躍をお祈りします。

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    1. shuさんありがとうございます。
      shuさんのブログも拝見しました。トライアスロンやマラソンといった耐久系スポーツもやられていらっしゃるのですね、30年振りのピアノ再開というのも同じでビックリです。
      アイアンマンを完走できたのでいろいろな事に自信がついたと勝手に思い込んでいましたが、今回の経験で、そんな思い込みは全くの勘違いだったことがよくわかりました。
      音楽の世界も奥深く、そこで勝負をしている方々の苦労や挑戦を垣間見ることができたのは幸運でした。
      またいつかその世界を訪ねてみたいと思います。

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  2. モニオさん、こんばんは。

    トライアスロンにブルベに、ピアノコンクールとモニオさんのチャレンジの幅が広くて感心しております。弾く側の気持ちを知ると、オーディオの聴き方も変わってくるかも知れませんね。奨励賞おめでとうございました。そして、お疲れ様でした。

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    1. 横浜のvafanさんおはようございます。
      お久しぶりです、ブログ訪問いただきありがとうございます。
      コンクールに出てみて、これまで音楽を演奏するという意味が全くわかっていなかったことに今更ながら気付きました。オーディオも然り、如何に今まで表面的な事象にのみ拘っていたかと。。。
      前向きに考えれば、これで生涯ずっと楽しめる趣味ができました。聴力が低下しても大丈夫です。
      いずれ、横浜のvafanさんにように、山を楽しむ趣味にも挑戦したいと思います。それでは良い年をお迎えください。

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  3. あけましておめでとうございます。

    初めてコメントさせていただきます。

    バッハコンクールというのは皆バッハを弾くのですよね。
    (すみません無知で(-_-メ)

    同じ作曲家の曲のコンクールとなると、他の人の実力がいやが上にもあからさまにわかちゃいますね。厳しいですね~。
    でも、ピアノだけでなくトライアスロンも挑戦なさってるんですね。
    トライアスロンはまねできませんが(笑)、挑戦する姿はすごく励みになります。

    今年もブログ楽しみにしています。



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    1. ありすさん、あけましておめでとうございます。
      ブログ訪問有難うございます。ありすさんのブログも拝見しました。ピアノ始められてまだ短いのにいきなり全国大会出場で銀賞とは凄すぎです。。。!
      後悔のない演奏ができたというのは本当に凄い事だと思います。スポーツでも「走った距離は裏切らない」という名言がありますが、ピアノも練習に費やした努力は裏切らないですね。

      「弾きたい曲そっちのけでコンクールの曲ばかり弾いていた」というお気持ちも共感します(笑)。私は早速、「次のコンクールはフーガの技法を弾け」という心の声に支配されつつあります(笑)。ちなみにバッハコンクールは高校生以上はバッハ限定です。

      ありすさんの今後のご活躍をブログで拝見するのを楽しみにしております。

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